1921(T10)・1101 コント「銀瓶」
【あらすじ】
カトリック教徒の小学校教師、風間先生。天涯孤独の彼は、家も家財道具の一切を売り払い、八百屋の二階の一間で禁欲生活を送っている。ある日、その八百屋の息子が、先生が手放すことの出来なかった唯一の道具、家族との思い出の詰まった銀瓶を持ち去ってしまう。教会で講演し、禁欲と執着について聴衆に訴えた先生は、深い満足を得て、部屋に戻ってきた。そして、銀瓶の失われた世界を目の当たりした先生は——
【登場人物】
風間先生、八百屋の亭主、奥さん、息子
【覚えたい語】
ペロレエゾン
雀子
アビテユエ
容れない
翠袖
居常倹素
蒼然
燦爛
素封家
デスポチスム
ジエネロジテ
オスピタリテ
ミリュー
立言
予覚
水口
デイクターム
アセチムス
人間浮華
珠数
【感想】
得意のモチーフであるカトリックを用いて書かれた、デビュー作。語り手が人物の内面を語らないスタイル、読者の教養が試される用語やレトリックの数々、現代の読者に好かれる要素はまったくない。
矛盾を徹底的に追及する姿勢、語られていないはずの心情が迫り来る描写、精神が動き転がっていく感覚、デビュー作とは思えないほど、スタイルが完成されている。