『石川淳全集』完全読破 "The Ishikawa Jun's complete works"

『石川淳全集』全19巻(筑摩書房 1989-93)を淡々と読んで、記録していきます。研究批評などはしません。

1921(T10)・1101 コント「銀瓶」

【あらすじ】

カトリック教徒の小学校教師、風間先生。天涯孤独の彼は、家も家財道具の一切を売り払い、八百屋の二階の一間で禁欲生活を送っている。ある日、その八百屋の息子が、先生が手放すことの出来なかった唯一の道具、家族との思い出の詰まった銀瓶を持ち去ってしまう。教会で講演し、禁欲と執着について聴衆に訴えた先生は、深い満足を得て、部屋に戻ってきた。そして、銀瓶の失われた世界を目の当たりした先生は——

 

【登場人物】

風間先生、八百屋の亭主、奥さん、息子

 

【覚えたい語】

ペロレエゾン

雀子

アビテユエ

容れない

翠袖

居常倹素

蒼然

燦爛

素封家

デスポチスム

ジエネロジテ

オスピタリテ

ミリュー

立言

予覚

水口

デイクターム

アセチムス

人間浮華

珠数

 

【感想】

得意のモチーフであるカトリックを用いて書かれた、デビュー作。語り手が人物の内面を語らないスタイル、読者の教養が試される用語やレトリックの数々、現代の読者に好かれる要素はまったくない。

矛盾を徹底的に追及する姿勢、語られていないはずの心情が迫り来る描写、精神が動き転がっていく感覚、デビュー作とは思えないほど、スタイルが完成されている。